酒場のお客さんに、ギター流しはどう近づく?
演奏に入る前に、まず接客をする必要があります。自慢のギターも歌も、見知らぬお客さんにアプローチし、リクエストをもらって演奏を披露できます。やりかたは無数にありますが、心理的負担が少なく、継続しやすい方法をご紹介します。
流しの営業ストレスが小さい
お客さんにとってストレスにならない
お店の迷惑にならない
【前提の考え方】
上記のすべてを叶える方法は、一言でいえば「空気をよむ」です。場になれて、冷静に流せるようになると身についてくる能力です。そのあたりを掘り下げてご説明します。
空気を読む理由は、場を良い方向に導きたいからですね。場を読めれば、その時その時の正解が見えてくる。正解をどんなふうに考えればよいか。自分がお店の人間だったら、お客だったらと想定します。そして「迷惑かも」という行為は慎み、自分がされたら嬉しいことをやる。その時その場所で、その流しの誠意ある正解になります。
そのように心がけると、やる側にストレスはないし、パワーも魅力も出る。後ろめたい気持ちでは全然チカラが出せないのです。究極的には営業マニュアルでなく「自分が前向きに人に与えたいものをイキイキと発揮する」ことが重要です。
では、具体的に、ストレスがなく喜ばれる流しのアプローチ方法をお話します。
1. 歩行して「流しが来た」ことを知らせる
まず巡回です。流しらしく「稼業であり、仕事である」と分かるように知らせ歩く。段階的に流しの存在情報を与えていく。これならば、まずストレスはお互い少ないのです。
【流しの接客の何がタイヘンか?】
いきなり話しかけても驚かれてしまうし、何者なのか、流し家業の説明からせねばならないのです。その上、歌を聴いてほしい、お客になってほしい、と有料の交渉まですることになる。まさに飛び込み営業。いきなりすぎるのです。世間の流しのイメージってコレに近いのかもしれません。だから「よくできますね」と感心されることもある。いやいや、さすがにこれは流しであろうとなかろうとハードルが高いです。
【ストレスの考え方】
会話している人々の間に割って入るよう方法は、お互いストレスです。自分がストレスのことは相手にもストレスなのです。なぜ自分がストレスを感じるか。相手のストレスを慮って自分にストレスがくるのです。だから、自分の許容範囲次第で空気の読み方も変わります。飲んで楽しくやっているところに、見知らぬ人が何か営業してきた。そのとき、どう感じるか。
「おお、流し!いいね!」と興奮して受け入れられるか。「いま話してるんで」と避けられうか。必要ならこちらから頼みますから、という心理がアナタに生まれるならば、その営業方法はストレスです。比較してみると、道で転びそうな老人を咄嗟に支えるとき、ストレスなど感じないでしょう。必要なことをするときは心理的にもスムーズなのです。だから、流しを必要とする人と会うため巡回します。
【流しに興味がある人を探すために歩く】
前置きが長くなりました。まず歩いて流しの存在を知らせます。音楽が好きな人、流しに興味がある人。歩いて見せることは、口で説明するより情報量が多く、はるかに刺激が強いのです。酒場の端からハシまでコマーシャルを打つような感じです。お店の人との挨拶、コミュニケーションも多いに良い効果を出します。部外者ではないのだな、と認識してもらえるのです。楽しそう!とか、危なくないか?とか人は総合的にそれぞれ勝手に判断します。とくに酒場の人は直感で感じ取っています。
【視界を見渡し、目星をつける】
人間、興味があれば、だいたい反応がある。あからさまじゃないとしても、何かあるのです。これが見込み客発見の段階です。客席に割って入って交渉するよりも、興味あるお客さんの受け皿になる。こちらがアプローチが楽でスムーズです。応えるかたちで営業がスタートできます。だから、前段階の「流しの存在を知らせる」ことがとても大事です。流しがいることを知らせた上で、その席の雰囲気と、流しに対する反応、両方の観点から、かなり効率よく目星がつけられるのです。
2. アプローチする
目星をつけることができたならば、即拒否、という事態にはなりにくいです。なぜなら、流しに気づき反応があった人たちですから。その上で、先方が気になっていることは、もしかしたら法外な金を取られるんじゃないか、という一抹の不安。人は楽しさよりも不安、恐怖、危険のほうが強く反応します。現代で流しスタイルの商売は珍しいわけで、当然の不安でしょう。ここで、明朗会計な金額を提示するのも1つの手です。
ただ私、パリなかやまの場合は、ひたすら相手の「好き」や「楽しみ」にのみフォーカスします。「お金のことは気にしないで、チップ制なので、自由に払ってください」とホントに軽く言うだけ。あなたのお気持ちでイイですよ、と。それ以上言うことはありません。もちろん、このやり方でちゃんと売上があがることは精査すべきです。
3. 対話し、演奏にこぎつける
商売の交渉する、という思考があると、お互い構えてしまう。矛盾するようだが、商売を忘れて、興味を持ってくれた人と、まず対話する。これが流し演奏の前で、見落とされがちな重要なポイントです。
【商売の原理】
楽しみや感動をその場に発生させれば、お金は自然法則のように払われる。流し経験から自然に得られる真理です。いちいち商売のことを考える必要はないのです。楽しみや感動があれば、お金が発生する。逆を考えれば、喜ばれる何かが無ければ、自由意志でお金は払われにくい。払う気にならない、二度と利用しない、が自然なのです。すると請求をしたり交渉をしたり、追い詰めるような作戦めいた方法を取ることになるのです。
【対話の役割とは?】
だから対話は、商売や交渉というよりも、同じ音楽が好きなモノ同士、という楽しい方向に導くために役に立ちます。その人に興味を持ち、どんな音楽が好きなのか、とか、何の集まりなのか、青春時代に聴いていたものは何か、出身地が同郷のアーチストは誰か、とか。まあそんな話をすればいいのです。また、流しはレアな存在ですから、自分の話をするのも良いでしょう。何年やっているとか、何が得意だとか。
【演奏できない場合について】
加えて、そこでリクエスト演奏まで進まないケースについて。飲みの場が熟していない、曲がなかなか決められない、などで興味はあるが今はリクエストが成立しない場合もある。なにかパンフレット、配りものなどがあると、あとで周ってきたときまでにリクエストを考えていてくれる場合もある。名刺代わりとして流しのメニューなど、渡しておくものがあったほうが良いでしょう。
■まとめ
このように流しの営業ストレスを極小にすることで続けらるようになります。お弁当売や、御用聞きみたいな感じでしょうか。この方法で、お客さんと接点が持てない、売上が上がらない、仕事にならない、などの場合、場所を変えてみましょう。
以上、流しの接客方法、アプローチのテクニックでした。